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その戦いの意味は
b0008658_221547.jpgきり、きり、きり、と音が聞こえる。
僕は他人事のようにその音を聞いていた。その音がどこから聞こえてくるのか、一体何の音なのか、そんなことは考えようとさえしなかった。少なくとも、今は他に考えるべきことがあった。



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某日、ル・アビタウ宮殿。
僕はその日、いつもの鎧の代わりに魔法の外套を着込み、お馴染みの騎士剣と盾の代わりに杖を背負い、30人を越す仲間たちと一緒にある強敵に挑もうとしていた。
東方の神話に語られし、四霊神を統べる神──麒麟。何人もの冒険者が挑み、あるいはその強力な攻撃の前に膝を着き、あるいはその心臓を剣で貫いて栄光を手にした。
そして今、僕らはここにいる。麒麟を喚び出すための捧げ物、四霊神から手に入れた印章を手にして。ここまで来たらもう後には引けない。
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本来なら意気も上がろうというような状況の中、僕は作戦会議を行う仲間たちを眺めながら冷静だった。
理由はわかっている。この場にいるにしては、明らかに僕の経験が足りていないせいだ。魔力が豊富な種族に生まれた身の上を喜ぶべきか疎むべきか、今回は傷ついた仲間を魔法で癒す役目をもらい、その中でも麒麟ではなく麒麟が喚び出す四霊神と戦う部隊に配属された。戦いの末端であるとはいえ、やはりこの身の弱さを恥じ、自らをこの場から消し去ってしまいたいと願う気持ちは抑えきれない。

僕は目を閉じた。
そう、わかっている。末端の戦いが重要でないとは思わないし、仲間を癒す仕事が大事なのもわかっている。今の自分の実力で前線に立てないことだって勿論わかっているし、この場に参加させてくれた仲間には感謝こそすれ苦言を呈する気など毛頭ない。それでも僕は、戦闘の矢面に立ち、身を挺して仲間を守る騎士として修業を積んだ。できればこういう活躍の仕方はしたくなかったところだ。
そして本当は、それが「活躍」ですらないことも僕は知っている。僕がいなくても、この戦いに支障がないどころか、会話の流れすらも少しも変わりなく物事は進むはずだ。

ただただ自分の経験不足が辛い。このまま、目を閉じたままで時が過ぎ去ってしまうのを待っていたい。
でも、こいつをやり過ごす訳にはいかない。僕はこの戦いを目に焼き付けなくてはいけない。僕はそのためにここへ来たのだ。これからの自分のために。

僕は目を開いた。
四霊神の印章を掲げる仲間の両手が見えた。これから何かが起こることを予感させる空気の震え、内耳に差し込んだ魔法の真珠から聞こえてくる仲間の息遣い、薄暗い古代神殿に散らばる仲間たちの姿、その全てに意識を集中する。
やがて遠くから地響きのような声が聞こえ、その巨大な影は僕らの前に姿を現した。
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戦いは、予め打ち合わせた通り円滑に進んだ。
身躱しの術に長けた忍者が麒麟の注意を引きつけ、次々と召喚されてくる四霊神を別動隊が火力で押さえ付ける。全ての霊神を退け、ひときわ激しい攻撃が過ぎ去った後、僕らは勝ちを確信した。
全ての仲間が自分の仕事をしていた。狩人は自慢の弓や銃を惜しげなく使い、黒魔道士はここぞとばかりに精霊魔法を叩き込む。神殿の隅での精神統一を終えた侍たちが、魂を込めた一撃を見舞いに前線へと走ってゆく。麒麟の攻撃に耐えきれず倒れた仲間は、白魔道士の癒しの魔法で即座に戦線に復帰する。

やがて時計の針がひと回りする頃、麒麟は静かにその身を神殿の床に横たえた。
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その後、移動魔法でジュノに帰ってきた僕らは、まだ熱気に包まれていた。先の戦闘を振り返り、あそこはこうだった、ここはああだった、彼のこの行動が素晴らしかった、あの行動はもっと違う風にするべきだった……そんなことを熱っぽく語り合う彼らを、僕はしっかりと見つめていた。

彼らはこうしてひとつの戦闘から掛け替えのない経験を積み、少しずつ成長してきたのだ。未踏の地へ赴き、誰も知らない魔物と渡り合い、その全ての戦いから何かを得た結果、こうして神さえも圧倒することができる力を身に付けた。

外套を脱ぎ、着慣れた鎧を身に着けながら僕は思う。次に大きな戦いがあるとしたら、その時こそ僕は先頭に立って戦えるだろうか? 高揚感に包まれながら、彼らと語り合うことができるだろうか?
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きり、きり、きり、と音が聞こえる。
そうか、僕は最初からわかっていたんだ。この音は僕の中から聞こえる──本当の意味で皆の力になれない僕の中の、少しだけかみ合わない歯車が立てる音だ。
いつか、あの輪の中に入ろう。この戦いを記憶に刻み、これからの修業の糧にしよう。この思いを再確認するために、僕は今日の戦いへ赴いたのだ。

僕の中の歯車がなめらかに回り始める日、皆と肩を並べて戦うことができるようになる日のために、僕は今も戦い続けている。
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by tanglewire | 2005-07-24 22:04 | online game
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